今週の本棚:鹿島茂・評 『脳内汚染』=岡田尊司・著

往々にして、麻薬的快感を持つものや、あるいは麻薬というやつは、それをやらない人間には何が良いのか何が楽しいのがさっぱり分からないものだ。

書評のルール違反は覚悟の上で、本書が大ベストセラーになって一人でも多くの人に読まれることを強く願いたい。なぜなら、本書は、日本が直面している社会現象、すなわち、キレやすい子供、不登校、学級崩壊、引きこもり、家庭内暴力、突発的殺人、動物虐待、大人の幼児化、ロリコンなど反社会的変態性欲者の増大、オタク、ニートなどあらゆるネガティヴな現象を作りだした犯人が誰であるかをかなりの精度で突き止めたと信じるからだ。

ふざけるのもたいがいにしてほしい。
俺は鬱病患者で*1不眠症*2不登校でオタクだ。
そのひとつの大きな原因がACだということは分かった。
でもその原因はインターネットか?ゲームか?
俺はゲームは縦シューをちょっと好む程度でほとんどやりません。特にRPG大嫌いです。


ゲームに依存性があるのは確か。ドーパミンがどばどば出るのも確か。
ゲームにはまると目をつむってもそのゲームの画面が出てきます。
でもだからって、それが様々な社会問題の原因なのか?
ゲームオタクでもアニメオタクでも健全な社会生活を営んでいる人はいっぱいいる。

「ずっと飽きが来ないほどに、エキサイティングなものとなったゲームは、逆に極めて危険なものとなってしまったのである。なぜなら、ずっと飽きが来ないほどにわくわくし興奮するとき、脳で起きていることは、麻薬的な薬物を使用したときや、ギャンブルに熱中しているときと基本的に同じだからである。子どもにLSDやマリファナをクリスマス・プレゼントとして贈る親はいないだろう。だが、多くの親たちは、その危険性について正しく知らされずに、愛するわが子に、同じくらいか、それ以上に危険かもしれない麻薬的な作用を持つ『映像ドラッグ』をプレゼントしていたのかもしれない」

…ゲームの本質が何も分かっていない。
縦シューのゲーム性なんてファミコンの時代から大して変わらないっつーの。
怒首領蜂以前/以後」という分け方はできるにしても、驚くほどのリアリティの向上というものない
それにしたって同じだけの麻薬的なものがあって気持ちいいわけですよ。


だいたい、依存性のあるもの全て駄目なんてじゃあお前はモルモン教徒にでもなれっつーの。
アルコールもニコチンもカフェインもない生活なんか送るくらいならば死んだ方がましだ。
そんな事言うならば人類の基本的な営みのセックスは何なんだ。
ドーパミンだとかエンドルフィンだとかがどばどば出るものが駄目ならばセックスもオナニーも悪になるぞ。
それこそ「デモリションマン」の世界だ。
著者に言ってやりたい。というか、精神科医ならばドーパミンがいかに重要な物質が知ってるでしょう?


まぁ、一番最初の一言に付きます。
しかし、

また、長時間のゲーム耽溺で失われる時間の損失も深刻だ。家族や友人との接触の中で学習される人生体験がまったく積まれないことになるからだ。

 「子どもの二度とない貴重な時間が、奪われていくのだ。(中略)だが、中毒状態になりかけの子どもは、もうそのことしか頭になく、いくら保護者が注意し言い聞かせても、自分で行動をコントロールすることは非常に困難なのである」

ほんっっっっっっっとーーーーーーーーーに頭が悪い。
一緒にゲームをするということの重要性が分かってないみたいだな。
親と子がゲームで一緒に遊ぶ。別に良いじゃないか。


なんっかもう、そういう奴ってムカムカするわ。
クソ面白くもねぇ。
これでこの作者が飲酒・喫煙をするとしたらもう大笑いだな。そのこと自体が大きな自己矛盾*3だっつーの。


加えて説得力があまりにも無いことに気付かないものだろうか。
テレビゲームが発明されて30年近く。もういい年こいたおっさんでもゲーマーはいる。
テレビゲームは悪いなんてのが何の説得力もないことにお気付きでないのだろうか。
まさにノイジー・マイノリティ。


あともーちょっと付け加えてやるとしたら。
エロゲーってあるじゃないか。
あれだってイリュージョンとかは別として全然インタラクティブ性なんか無いぞ。
ただの挿絵付き官能小説なわけで。


因に。俺はあのアンパン野郎が昔から大嫌いだった。
単純な勧善懲悪なんかに子供が騙されるかっつーの。


最後に言うとすればだなぁ。
麻薬が作り出す文化というものくらいお分かりでしょう。
インドじゃお祭りの日にみんなでガンジャ吸うわけですよ。バングラッシー飲むわけですよ。
社会的飲酒だって同じでしょう。
テレビゲームだって大きな文化を作った。
アメリカで生まれたテレビゲームをここまで大きくしたのは日本だ。
日本人が誇るべき文化なんじゃないだろうか。


まとまりがなくなってきたけど。
様々な社会問題の原因というのはテレビゲームなんて単純なものでなく、日本社会の病理そのものなんじゃないのか?
それが何なのかは、誰も分からないけれども。

分かりやすい悪

自称「インテリ」とかには大変うけるんだろうなぁ。この本。
僕はれっきとした自称「インテリ」ですが。


"mass"が嫌いです。
自分は"mass"じゃないな、と思っています。
でも"mass"がこの論理を受け入れるか?ということ。
迷著というかトンデモ本マニア的に最高の本「ゲーム脳の恐怖」は"mass"に受け入れられたか?ということ。
Noisy Minorityだということに気付いていない(自分が"Majority"だと勘違いしている)馬鹿どもには受け入れられたけど。
"Mass communication"に従事する者が自らがBig minorityだということに気付いていないんだよなぁ。


この本をと学会がどう取り上げるかが楽しみ。あの人たちならば気持ち良く攻撃してくれるでしょう。

松沢呉一氏の批判。

大好きなライターの一人の松沢呉一氏が批判していた。
言いたいことは一緒ですがさすがプロが書いた文章、こっちの方が遥かに奇麗ですのでこちらをオススメ。
全くもってその通り。生きるってことはドーパミンを出すってことなのだ。


俺も「パチスロ脳の恐怖」って本でも書いて一儲けしようかな。
と言いたいけれども、要するにそんな工房でも簡単にかけてしまうほど中身が薄いってこと。
「で、"科学的"根拠は?」と言いたいね。

*1:ドグマチール飲まないと死にます。

*2:ユーロジンのない眠りなど考えられません

*3:この二つはれっきとした「麻薬」です。