嶽本野ばら「ロリヰタ。」

凄い小説を読んだな、と思った。


表題作「ロリヰタ。」は構成の妙に唸った。
なるほど、そういうためのあの話だったのかと。
具体的に話してしまうとネタバレになるので避けますが。
そしてやはり、話自体も大変面白かったのだけれども。
ロリヰタ。」はジャンルで言うと私小説ってやつだね。だからこそ面白かった。


だけれど、書き下ろしの「ハネ」には参った。やられた。
主人公の女の子、「貴方」、どちらも俺に似ている。
久しぶりに俺は強い共感を持って物語に入り込めた。
もっとも、俺が片隅で読む本はみうらじゅんとか、大槻ケンヂとか、ゲッツ板谷とかだけど。


他者に対する無理解というのは目に余るものがあると思う。
俺の場合「誰にも迷惑をかけなければ、いいじゃないか」というほど何事にも寛容になってきた。
判断基準はそれだけ。
しかし世の中の、特に大人とかってやつ、それも教師とか警官とかいわゆる「まじめ」な人たちは分からないんだよな。
理解する必要はない。理解するということはそれすなわち、自分もそうであるということだから。
だけれども、理解はしなくても「寛容」になれと。
「んー、お父さん良く分からないけど、でもお前がいいって言うのならいいんじゃないかなー」ぐらいになれと。


「ハネ」は話の構成に唸らされたし(「話」を作るのが大変巧い作家だなと思った)何よりすごく痛いんだ。
心が痛くなるんだ。
でも最後まで自分の思いに正直だったから良かった。ハッピーではないかもしれないけど、バッドでもない。


この一冊で私は完璧にやられてしまった。
「ハネ」すげぇよ。いつも本を読んでる男の子と、暗い女の子の恋なんてまさに俺が描きたかったことじゃないか。
それを巧く、美しく描くんだもの。
物書きとして嫉妬したよ。そして、この一冊でファンになってしまったのです。